コラム
加齢黄斑変性症(AMD)に対する治療について
「最近、ものが歪んで見える」「視野の中心が暗い」——こうした症状は加齢黄斑変性症(AMD)のサインかもしれません。放置すると視力が著しく低下し、日常生活に大きな支障をきたす場合があります。本記事では、AMDの原因・症状から、日本で承認されている抗VEGF薬の種類・投与スケジュール・費用まで、わかりやすく解説します。
1. 加齢黄斑変性症(AMD)とは?
加齢黄斑変性症(Age-related Macular Degeneration:AMD)は、眼の網膜中央にある「黄斑(おうはん)」が加齢などをきっかけに障害される病気です。欧米では以前から成人の失明原因の第1位として知られており、日本でも近年増加傾向にあります。
黄斑は直径わずか約1.5〜2mmの小さな領域ですが、文字を読む・顔を認識する・色を判別するといった「中心視力」のほぼすべてをここで担っています。この部位が損傷すると、視力の大幅な低下や歪んで見える症状(変視症)が生じます。
※ AMDによる失明は「社会的失明」と呼ばれ、光をまったく感じなくなるわけではありませんが、中心の視力が著しく損なわれます。

2. 原因とリスク因子
AMDの直接的な原因は、加齢に伴う黄斑組織の変化と、脈絡膜(網膜の外側の血管層)から伸びる「新生血管(脈絡膜新生血管:CNV)」の発生です。以下のリスク因子が重なると発症しやすくなります。

- 加齢(50歳以上から増加、70歳代で急増)
- 喫煙(非喫煙者と比べ発症リスクが3〜4倍高いとされる)
- 肥満・メタボリックシンドローム
- 強い紫外線への長期暴露
- 家族歴・遺伝的素因(ARMS2/CFH遺伝子多型など)
- 心血管疾患・高血圧
特に喫煙は最も強力なリスク因子であり、禁煙は発症予防・進行抑制の両面で重要です。
3. 加齢黄斑変性症の種類

3-1. 滲出型(しんしゅつがた)AMD
脈絡膜新生血管(CNV)が発生し、血管から滲出した液体や血液が黄斑を傷つけるタイプです。日本人に多く、進行が速いため早期治療が非常に重要です。抗VEGF薬による硝子体内注射が第一選択治療となります。
3-2. 萎縮型(いしゅくがた)AMD
新生血管は伴わず、網膜色素上皮細胞が徐々に萎縮するタイプです。欧米に比較的多く、緩徐に進行します。現在のところ根本的な治療法は限られており、進行予防としてのサプリメント(後述)が有用です。
4. 症状——こんなサインに気づいたらすぐ受診を
- 中心がぼやける・暗く見える(中心暗点)
- 直線が波打って見える(変視症・歪視)
- 読書・細かい作業がしにくくなった
- 色の識別が難しくなった
- 明暗の順応に時間がかかる
📌 セルフチェック:アムスラーチャートで確認
方眼状のアムスラーチャート(方眼紙)を30cm程度の距離で片目ずつ見て、格子が歪んで見えたり、中央が欠けて見えたりする場合は早急に眼科を受診してください。
5. 診断方法
眼科での主な検査は以下のとおりです。いずれも外来で受けられます。
- 視力検査・眼底検査
- 光干渉断層計(OCT):黄斑の断面を詳しく観察
- 眼底造影検査(FA/ICGA):造影剤で新生血管の位置・範囲を確認
- アムスラーチャート検査:歪みの自覚的評価
当院では最新の光干渉断層血管撮影(OCT-A)を用いた精密検査も行っています。造影剤不要で脈絡膜新生血管を可視化でき、患者さんへの負担を最小限に抑えます。
6. 治療法
6-1. 硝子体内注射(抗VEGF療法)——現在の標準治療

滲出型AMDの第一選択治療です。新生血管の成長を促すVEGF(血管内皮増殖因子)という物質の働きを抑える薬(抗VEGF薬)を、細い針で眼球内(硝子体)に直接注射します。 当院では直径わずか0.16mm(32ゲージ)の極細針を使用しているため、処置中の痛みはほとんどなく、日帰りで受けていただけます。
▶ 日本で承認・使用されている主な抗VEGF薬
| 薬剤名(一般名) | 商品名 | 投与方式 | 導入期 | 維持期スケジュール | 保険適用 |
| ラニビズマブ | ルセンティス® | 硝子体内注射 | 1回/月 × 3ヶ月 | PRN法 or 毎月投与 | ○ |
| アフリベルセプト | アイリーア® | 硝子体内注射 | 1回/月 × 3ヶ月 | 2ヶ月毎 or T&E法 | ○ |
| ブロルシズマブ | ベオビュ® | 硝子体内注射 | 1回/月 × 3ヶ月 | 3ヶ月毎(最短) | ○ |
| ファリシマブ | バビースモ® | 硝子体内注射 | 1回/月 × 4ヶ月 | 最長16週毎(T&E法) | ○ |
▶ 投与スケジュールの種類
導入期(初回3〜4ヶ月)は原則として月1回注射を行います。その後の維持期は以下の3つの方法から選択されます。
| 投与方法 | 内容 | 特徴 |
| PRN法 (必要投与法) | 導入期終了後、毎月診察し悪化時のみ追加注射 | 受診頻度が高い。患者負担は比較的小さいが見逃しリスクあり |
| T&E法 (Treat & Extend) | 注射間隔を2〜4週ずつ延長・短縮して個別最適化 | 通院と注射が同タイミング。多くの施設で標準的に採用 |
| 固定投与法 | 決められた間隔で注射を継続(例:毎月、2ヶ月毎) | スケジュール管理しやすいが過不足投与のリスクあり |
現在最も広く用いられているのはT&E法(Treat & Extend法)です。注射間隔を病態に応じて最大16週まで延長できるため、通院回数を減らしながら視力を維持する効果が期待できます。
6-2. 光線力学療法(PDT)
光感受性薬剤(ベルテポルフィン)を静脈注射した後、特定波長のレーザーで新生血管を選択的に閉塞させる治療法です。現在は主として特定のサブタイプ(ポリープ状脈絡膜血管症:PCV)や抗VEGF薬の効果が不十分な症例に組み合わせて使用します。
6-3. レーザー光凝固術
新生血管を高出力レーザーで直接焼き固める方法です。新生血管が黄斑中心窩から離れた位置にある場合に限って行われます。周囲の正常組織にもダメージが及ぶため、現在は使用頻度が減っています。
6-4. サプリメント(AREDS2処方)
萎縮型AMDや初期AMDの進行予防に用いられます。米国の大規模臨床研究(AREDS2)で有効性が示されたビタミンC・E、ルテイン、ゼアキサンチン、亜鉛、銅の組み合わせが標準的です。
当院では医学的エビデンスに基づくサプリメントのみを推奨しています。詳細は診察時にご相談ください。
7. 加齢黄斑変性症の予防・進行抑制
- 禁煙(最も重要なリスク低減策)
- 紫外線対策(UVカットサングラスの着用)
- バランスの良い食事(緑黄色野菜、魚類の摂取)
- 適度な運動・体重管理
- サプリメント(AREDS2処方)の活用
- 定期的な眼科検診(50歳以上は年1回推奨)
8. 当院での受診について
真愛会グループの眼科では、大学病院と同水準の抗VEGF療法を、地域に密着したクリニックでご提供しています。都心部への通院が難しい高齢の患者さんでも、ご自宅近くで最新の治療を受けていただけます。
- 日帰り硝子体内注射(32G極細針・局所麻酔)
- OCT・OCT-Aによる精密画像診断
- 治療スケジュールの個別最適化(T&E法など)
- サプリメント・生活指導による予防サポート
「見え方が変わった気がする」「眼のことで不安がある」という方は、どうぞお気軽にご相談ください。
まとめ
- 加齢黄斑変性症(AMD)は50歳以降に増加する眼の病気で、放置すると中心視力が著しく低下します
- 日本人に多い滲出型AMDは、抗VEGF薬による硝子体内注射が標準治療です
- 現在4種類の抗VEGF薬(ラニビズマブ、アフリベルセプト、ブロルシズマブ、ファリシマブ)が保険適用で使用可能です
- 投与スケジュールはPRN法・T&E法・固定投与法があり、患者さんごとに最適化します
- 治療費は健康保険が適用され、高額療養費制度も利用できます
早期発見・早期治療が視力温存の最大の鍵です
関連記事
-
2026.04.15
真鍋アイクリニック国立
白内障
多焦点レンズ・ICL
真鍋クリニック
永本アイクリニック
多焦点眼内レンズとは?種類・費用・選び方をわかりやすく解説【2026年最新版】
「白内障の手術を機に、老眼鏡なしで生活したい」「手元もパソコンも遠くも、裸眼で見…
-
2026.04.15
白内障
真鍋クリニック
永本アイクリニック
当院での日帰り白内障手術について(費用・手術時間・流れを解説します)
「目がかすむ・まぶしい・ぼやけて見える」——こうした症状が続く場合、白内障が原因…
-
2026.04.15
網膜・硝子体
真鍋クリニック
当院での日帰り網膜硝子体手術について(対象疾患・手術の流れ・費用を解説します)
「視野の一部が欠けてきた」「目の前に黒い影が浮かんでいる」「ものが歪んで見える」…
-
2026.04.15
白内障
真鍋クリニック
永本アイクリニック
乱視矯正眼内レンズ(トーリックIOL)のご案内
はじめに 白内障手術では、濁った水晶体を取り除き、代わりに人工の眼内レンズ(IO…
-
2026.04.15
緑内障
真鍋クリニック
永本アイクリニック
真愛眼科
緑内障とは?症状・検査・治療・iStent手術を解説
緑内障は、日本における中途失明原因の第1位であり、40歳以上の約20人に1人が罹…
-
2023.12.22
網膜・硝子体
真鍋クリニック
永本アイクリニック
真愛眼科
「糖尿病網膜症に対する治療について」
糖尿病で眼が見えなくなる? 糖尿病は血糖値が病的に高い状態が慢性的に続く病気で、…
地域のサポーターへ
真愛会は平成元年の法人設立以来、地域に根ざして35年。東京の多摩地域を中心に、医療・介護サービスを提供する医療法人社団です。
様々な事業を展開している真愛会には、あなたが活躍出来る環境がきっとあります。「医療人として成長したい」「社会に貢献したい」そんな思いのある方を、お待ちしています。