コラム
緑内障とは?症状・検査・治療・iStent手術を解説
緑内障は、日本における中途失明原因の第1位であり、40歳以上の約20人に1人が罹患しているといわれる身近な病気です。しかし、初期には自覚症状がほとんどなく、気づかないうちに視野が失われていくのが最大の特徴です。

「健康診断で視神経乳頭陥凹を指摘された」「眼圧が高いと言われた」「視野が少し欠けてきた気がする」——こうした方はもちろん、40歳を超えたすべての方に定期検診をおすすめします。この記事では以下をわかりやすく解説します。
- 緑内障とは何か・なぜ怖いのか
- 原因・種類・進行のしくみ
- 見え方の変化と受診のサイン
- 当院で行う4つの精密検査
- 治療法(点眼薬・レーザー・手術)
- iStent(アイステント)を用いた白内障同時手術——特徴・費用・適応
- よくあるご質問(FAQ)
緑内障とは?失明原因第1位の病気
眼球の中には「房水(ぼうすい)」と呼ばれる透明な液体が常に産生・排出されており、これが眼圧(目の内側の圧力)を一定に保っています。何らかの原因で房水の排出がうまくいかなくなると眼圧が上昇し、眼球の奥にある視神経が圧迫されて少しずつ傷ついていきます。この視神経の障害によって視野が徐々に欠けていく病気が「緑内障」です。

一度傷ついた視神経は元には戻りません。緑内障は「治す」病気ではなく、「進行を止める(視野を守る)」ことを目標に治療する病気です。早期発見・早期治療が視力・視野を守る唯一の手段です。
緑内障は中途失明原因の第1位
日本における後天的失明原因の約25%を緑内障が占めています。
40歳以上の約5%(20人に1人)が緑内障と推定されており、そのほとんどが未発見・未治療のままといわれています。定期的な眼科検診が早期発見の鍵です。
緑内障の原因・種類
緑内障は房水の流れ(排出経路)の障害の種類によっていくつかのタイプに分類されます。日本人に最も多いのは「正常眼圧緑内障」であり、眼圧が正常範囲でも発症するという点が重要なポイントです。

① 開放隅角緑内障(かいほうぐうかくりょくないしょう)
房水の出口(隅角)は開いているにもかかわらず、排水フィルター(線維柱帯)が目詰まりして眼圧が上昇するタイプです。10〜15年という長い時間をかけてゆっくり進行するため、初期は全く自覚症状がありません。健康診断・人間ドックで初めて指摘されることが多い緑内障です。
② 正常眼圧緑内障(せいじょうがんあつりょくないしょう)
日本人の緑内障の約7割を占める最多タイプです。眼圧は21mmHg未満の正常範囲内にあるにもかかわらず、視神経が障害されて視野が欠けていきます。視神経が通常より圧力に弱い・血液循環の問題などが原因と考えられています。眼圧の検査だけでは見逃されるため、眼底検査・OCT・視野検査の組み合わせが不可欠です。
③ 閉塞隅角緑内障(へいそくぐうかくりょくないしょう)
虹彩(茶目)が前方に押し出されて隅角が狭くなり、房水の出口が塞がれることで眼圧が急上昇するタイプです。急激に眼圧が上昇するものを「急性緑内障発作」といい、突然の目の激痛・充血・視力低下に加えて、頭痛・吐き気などの全身症状を伴います。処置が遅れると短時間で失明することもある緊急疾患です。
急性緑内障発作が疑われる場合は至急受診を
「突然目が痛くなった」「急に視力が落ちた」「吐き気・頭痛を伴う」場合は急性緑内障発作の可能性があります。一刻も早く眼科を受診してください。
④ 続発緑内障(ぞくはつりょくないしょう)
糖尿病網膜症・ぶどう膜炎・外傷・ステロイド薬の長期使用など、他の眼疾患や薬剤が原因で二次的に眼圧が上昇する緑内障です。原因疾患の治療と並行して眼圧管理を行います。
緑内障の症状・見え方の変化
緑内障の最大の特徴は「自覚症状が出にくい」ことです。視野の欠けは周辺部から始まるため、中心の視力は保たれたまま、気づかないうちに進行していきます。特に両眼で見ている日常生活では、片眼の視野欠損をもう一方の眼が補ってしまうため、さらに気づきにくくなります。

■ 緑内障の進行段階と見え方
| 進行段階 | 視野の状態 | 自覚症状 |
| 初期 | 周辺部にごく小さな欠けが始まる | ほぼなし。健診で偶然発見されることが多い |
| 中期 | 視野欠損が徐々に拡大する | 「視野の端が見えにくい」と感じ始める場合も |
| 後期 | 視野が大きく失われる | 日常生活に支障が出始める。中心部も影響を受け始める |
| 末期 | 管状視野(中心のみ見える状態) | 視野がほぼ消失。中心視力も低下 |
以下のような変化に気づいた場合は、早めに眼科を受診してください。
- 見え方の端が暗い・欠けている気がする
- 電柱など端のものにぶつかりやすくなった
- 健診で「視神経乳頭陥凹拡大」「眼圧高め」を指摘された
- 近親者(特に親・兄弟姉妹)に緑内障の人がいる(遺伝的リスクあり)
- 強度近視がある(正常眼圧緑内障のリスク因子)
- ステロイド薬を長期使用している
当院で行う緑内障の精密検査
緑内障の診断・進行管理には複数の検査を組み合わせることが不可欠です。当院では以下の4つの精密検査を行っています。
① 眼圧測定
房水が眼球内にたまることで眼圧(目の硬さ)が上昇します。健康診断でも行われる最も基本的な緑内障検査です。空気を目に当てる非接触式が一般的です。目をつぶらず、力まずに目を大きく開けて受けてください。
正常値:10〜21mmHg。ただし正常眼圧緑内障は正常範囲内でも発症するため、眼圧のみで診断はできません。
② 眼底検査
瞳孔を開く点眼薬(散瞳薬)をさしてカメラで目の奥を撮影し、視神経の状態を直接観察します。視神経乳頭が陥没したように見える「視神経乳頭陥凹拡大」が緑内障の特徴的な所見です。健診で「視神経乳頭陥凹」を指摘された方はこの検査が必要です。
検査後、数時間は光がまぶしく、手元が見えにくくなります。当日のお車・バイクの運転はご遠慮ください。
③ 視野検査
視野(見える範囲)の欠けを測定する検査です。片目ずつドーム状の機械に顔を入れ、光の点が見えたらボタンを押します。静的視野計(ハンフリー視野計)が標準的で、緑内障の障害部位・進行度を正確に把握できます。
集中力が必要で15〜20分程度かかります。緑内障の進行を追うため、定期的に繰り返し行います。
④ OCT検査(光干渉断層計)
光を使って網膜・視神経の断面を非接触で精密に撮影する検査です。視神経線維層の厚さを数値化することができ、視野検査で異常が出る前の超早期緑内障を発見できることがあります。
当院では視野検査とOCT検査を組み合わせて、より精度の高い緑内障の診断と経過観察を行っています。
緑内障の治療法
緑内障の治療はすべて「眼圧を下げることで視神経へのダメージを減らし、進行を止めること」が目的です。一度失われた視野は回復しません。治療によって「今の視野を守る」ことが最大の目標です。
① 点眼薬(目薬)による治療
最も基本的な治療法で、多くの患者様は点眼薬から治療を開始します。房水の産生を抑える薬・房水の排出を促す薬など、作用機序の異なる複数の種類があります。1種類で効果不十分な場合は2種類・3種類と組み合わせます。
| 薬の種類(代表例) | 主な作用 |
| プロスタグランジン関連薬 | 房水の流出を促進。最も眼圧下降効果が強く、第1選択薬として使われることが多い |
| ベータ遮断薬 | 房水の産生を抑制。 |
| 炭酸脱水酵素阻害薬 | 房水の産生を抑制。点眼薬のほか内服薬もある |
| α2作動薬 | 房水産生抑制+流出促進の二重作用。視神経保護効果も期待 |
| 配合点眼薬 | 2種類の成分を1本に配合。点眼回数を減らし服薬負担を軽減 |
※ 点眼薬は毎日決まった時間にさし続けることが重要です。自己判断で中止すると眼圧が上昇し、視野障害が進行します。
② レーザー治療(選択的レーザー線維柱帯形成術:SLT)
レーザーを用いて房水の排出口(線維柱帯)を刺激し、房水の流れを改善して眼圧を下げる治療です。点眼薬の補助として、または点眼薬の代替として行われます。外来での日帰り処置が可能で、痛みはほとんどありません。
③ 手術治療
点眼薬・レーザーで十分な眼圧下降が得られない場合や、より積極的に進行を抑制したい場合に手術を検討します。
| 術式 | 特徴 |
| 線維柱帯切除術(トラベクレクトミー) | 房水を眼外に排出する新たな通路(濾過胞)を作る。眼圧下降効果が最も高いが、術後管理が複雑 |
| 線維柱帯切開術(トラベクロトミー) | 線維柱帯を切開して房水の流れを改善。比較的安全で術後管理が容易 |
| 低侵襲緑内障手術(MIGS) | 身体への負担が少ない最新世代の手術。iStent(アイステント)が代表例。後述参照 |
iStent(アイステント)とは——白内障と同時にできる低侵襲緑内障手術
当院では専門のトレーニングを修了した眞鍋医師が
iStentを用いた「水晶体再建術併用眼内ドレーン挿入術」を実施しています。
緑内障と白内障を同時にお持ちの方は、ぜひご相談ください。
iStentとはどんな装置?
iStent(アイステント)は、医療用チタン合金でできた極めて小さな眼内ドレーン(排水路)です。現在使用されているiStent inject Wは長さ約0.36mm・重さ約60マイクログラムと、人体に埋め込まれる医療機器の中で最小クラスのデバイスのひとつです。肉眼ではほとんど見えない大きさで、挿入後に患者様ご自身も他者からも見えません。
眼の中を循環する房水の排出口「線維柱帯(せんいちゅうたい)」という組織に2本のステントを留置することで、目詰まりした排水経路にバイパスを作り、房水の流れを改善して眼圧を下げます。
手術の特徴・メリット
| 項目 | iStent(低侵襲緑内障手術) | 従来の緑内障手術(濾過手術等) |
| 手術時間(緑内障部分) | 約5〜10分 | 30分〜1時間以上 |
| 白内障との同時施行 | 可能(同一切開創) | 別途手術が必要 |
| 麻酔 | 点眼麻酔のみ | 球後麻酔または全身麻酔 |
| 術後入院 | 不要(日帰り) | 数日〜2週間程度必要なことも |
| 低眼圧・濾過胞の合併症 | 少ない | 起こりやすい |
| 術後管理の複雑さ | 少ない | 複雑(頻回な診察が必要) |
期待できる眼圧下降効果は点眼薬1種類分(約3〜8mmHg)程度です(個人差あり)。手術後も点眼薬が不要になるわけではありませんが、点眼本数を減らせる可能性があります。
適応条件
iStentを用いた白内障同時手術が適応となる主な条件は以下の通りです。
- 白内障を有し、白内障手術の適応がある
- 点眼治療中の軽度〜中等度の開放隅角緑内障(正常眼圧緑内障を含む)
- 点眼薬だけでは十分な眼圧コントロールが難しい、または点眼本数を減らしたい
閉塞隅角緑内障・重度の緑内障・続発緑内障などは適応外となる場合があります。
ご自身の緑内障のタイプ・状態が適応になるかどうかは、診察・検査後に担当医が判断します。
まずはご相談ください。
手術の流れ
白内障手術と同一の日・同一の切開創から行います。白内障手術が終わった後、同じ切開創からiStentの挿入器具を眼内に導入し、線維柱帯に2本のステントを正確に留置します。追加の切開は不要です。緑内障手術部分の所要時間は約5〜10分で、白内障手術と合わせた総手術時間は15〜20分程度です。
費用・保険適用
iStentを用いた白内障同時手術(「水晶体再建術併用眼内ドレーン挿入術」)は健康保険が適用されます。
| 保険負担割合 | 目安となる自己負担額(片眼・手術費用のみ) |
| 3割負担(一般) | 約80,000〜90,000円程度 |
| 2割負担(高齢者等) | 約55,000〜60,000円程度 |
| 1割負担(高齢者等) | 約28,000〜30,000円程度 |
※ 白内障手術費用とiStent手術費用を合算した目安です。術前検査・薬剤費は別途かかります。
※ 高額療養費制度の対象となります。事前に「限度額適用認定証」を取得すると窓口負担を抑えられます。
※ 多焦点眼内レンズ(選定療養)と組み合わせる場合は、多焦点レンズ差額が別途全額自己負担となります。
考えられる合併症・リスク
iStentは安全性の高い手術ですが、以下のような合併症が報告されています。
- 眼内出血(ステント挿入時に必ず少量起こるが、多くは翌日には吸収される)
- ステントの位置ずれ・閉塞(まれ)
- 白内障手術に伴う通常の合併症(感染症・眼圧上昇など)
これらの合併症はいずれも発生頻度は低く、術前に担当医が適応とリスクを丁寧に説明します。
よくあるご質問(FAQ)
Q1. 緑内障と診断されたら、すぐ失明しますか?
緑内障と診断されてもすぐに失明するわけではありません。適切な治療(点眼薬・レーザー・手術)を続けることで、多くの方が生涯にわたって良好な視野・視力を保てます。大切なのは「早期発見・早期治療・継続的な管理」です。
Q2. 眼圧が正常なのに緑内障と言われました。おかしくないですか?
おかしくありません。日本人の緑内障の約7割を占める「正常眼圧緑内障」は、眼圧が正常範囲(21mmHg未満)でも発症します。視神経が通常より圧力に弱い・血流障害などが原因と考えられています。眼圧だけでは緑内障を否定できないため、OCT・視野検査が重要です。
Q3. 緑内障の点眼薬はずっと続けなければいけませんか?
基本的には一生涯続けることになります。自己判断で中止すると眼圧が上昇し、視野障害が進行します。点眼本数が多くて負担という方は、iStent手術など追加治療によって点眼本数を減らせる可能性があります。担当医にご相談ください。
Q4. 緑内障の手術を受けると視力が上がりますか?
残念ながら、緑内障手術は「視力・視野を回復させる」ための手術ではありません。「眼圧を下げることで進行を止める(今の視野を守る)」ことが目的です。白内障も同時にある場合、白内障手術により視力が向上することはあります。
Q5. iStent手術は痛いですか?
白内障手術と同じく点眼麻酔のみで行います。手術中の鋭い痛みはほとんどありません。ステント挿入の際に軽い圧迫感を感じることがある程度です。
Q6. 緑内障があっても白内障手術は受けられますか?
受けられます。むしろ、緑内障と白内障が同時にある場合は、iStentを用いた同時手術により両方を一度に治療できることがあります。白内障手術自体も、隅角が広がる効果があり、眼圧を下げる助けになることがあります。
Q7. 家族に緑内障がいます。自分も受診すべきですか?
はい、ぜひ受診してください。緑内障には遺伝的要因があることが知られており、一親等(親・兄弟姉妹)に緑内障がある場合、発症リスクが高まるとされています。40歳を超えたら定期的な眼科検診を受けることをお勧めします。
Q8. 緑内障の検査は痛いですか?どのくらい時間がかかりますか?
眼圧測定・OCT検査は痛みなく短時間(数分)で終わります。視野検査は片目約15〜20分かかり、集中力が必要ですが痛みはありません。眼底検査の散瞳点眼後は数時間まぶしくなるため、当日の車の運転は控えてください。
まとめ・お気軽にご相談ください
緑内障は「自覚症状のないまま進行する」という特性から、発見が遅れがちな病気です。しかし早期に発見して適切な治療を続ければ、多くの方が生涯にわたって視野・視力を守ることができます。
真鍋クリニック(東京都羽村市)では、OCT・視野検査を組み合わせた精密な緑内障検査を行うとともに、白内障と緑内障を同時に治療できるiStent(アイステント)手術も提供しています。「健診で指摘された」「目薬の本数を減らしたい」「白内障と緑内障が両方ある」など、どんなことでもお気軽にご相談ください。
緑内障検査・iStent手術・白内障手術のご相談はお気軽にどうぞ。
ご予約・お問い合わせはお電話等で承っております。
文責:眞鍋 歩(医療法人社団 真愛会 理事長・真鍋クリニック院長・眼科専門医)
所属:医療法人社団 真愛会 真鍋クリニック(東京都羽村市)
最終更新日:2026年3月30日
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